Text & Photos: Kaori Hibiya, Photos: Stratford District Council


 

ストラットフォードとタウマルヌイをつなぐ、国道43号線は別名、フォーゴットン・ワールド・ハイウエーと呼ばれている。忘れ去られた世界という名の通り、道中には80年前の廃村と、手付かずの大自然が眠っている。
 長約150キロメートルのフォーゴットン・ワールド・ハイウエー(国道43号線)。タラナキ地方の雄大な自然を貫くこの国道は、「国内で最も外界と隔たれた道」といわれている。アップダウンの激しい道のり、見渡すばかりの丘陵地帯、奥深い原生林、そして道中に数えるほどしかない民家…。
 このエリアに、ヨーロッパ人が最初に入植したのは1895年のこと。だがその険しい地形と、多雨の影響による土のぬかるみのひどさで、思うような発展は遂げられなかった。そして1924年、壊滅的な大洪水が原因で入植は中止、廃屋だけがそこに取り残されることとなった。それから80年後の現在、かつての入植者たちが残した道をなぞるようにして造られた国道が、このフォーゴットン・ワールド・ハイウエーなのである。このハイウエーは移動のためよりも、歴史的遺跡の探訪、また景観のためとしての認識が高い。今回は、タウマルヌイから出発して、それぞれの見所を紹介していこう。
 まず一番のお薦めは、タウマルヌイから2時間ほど行ったところにある、マウント・ダンパー・フォールである。車から降りて原生林の中を30分ほど押し進んだ先にある、不思議な景観の滝だ。まるで巨大な生物の手によって、大地が上から繰り抜かれたかのような絶壁。そしてそこを勢いよく流れ落ちる、一筋の白い水流。高低差85メートルのこの滝は、見る者すべてを魅了してやまない。
 また、180メートルにわたる片道車線のモキ・トンネルも、ハイライトの一つだ。照明もままならない、土がむき出しになったトンネル内は、ちょっとしたスリル感が味わえる。車一台が通過するのがやっとの片道車線だが、通過を指示する警告信号などはない。「対向車とかち合ったらどうしよう」と思うところだが、そのような心配はおそらく皆無だろう。なぜなら、このトンネルを通過する車自体が、日に数十台しかないからだ。
 このハイウエーへ行くときに必ず注意されることがある。それは、「ガソリンを満タンにしていくこと」。道中には、ガソリンスタンドはおろか助けを呼べる民家がまったくないからだ。そんなハイウエーだが、中間地点を過ぎたあたりで、突然1軒のカフェが出現する。「忘れ去られた世界」の真ん中にこつ然と現れる、1軒のカフェ。
 「なぜこんなところにカフェが?と皆驚いて、興味本位で立ち寄ってくれるんだよ」と、オーナーのドンさんは語る。それでも訪れる客は、日に1組か2組だそうだ。このカフェは道路より一段高い丘の上にあり、タラナキの丘陵が360度見渡せる。はるか彼方まで続く緑の畝(うね)は、大地の持つ力強さがひしひしと伝わってくる絶景だ。
 カフェを後にすると、次はいくつもの”サドル”が待ち受けている。サドルとは、馬術道具の鞍(くら)を表す言葉であり、それと形状が似ていることから山と山の間の一段低くなったところがそう呼ばれる。
 数あるサドルの中でも、特に注目したいのは、ワンガモモア・サドル。ここは入植当時、最初に人々が住み着いたといわれる場所であり、現在もこの地を頑強に愛する28人の人々が、小さな集落、ワンガモモア・ビレッジを形成している。かつての廃屋も残っており、入植当時の様子を体感できる場所だ。
 フォーゴットン・ワールド・ハイウエーを「北島、最後の秘境に導く道」と称した人がいる。実際に訪れてみると、その意味が分かるだろう。決して観光地化されていない、緑に覆われた数々のスポットにぜひ訪れてほしい。


 

 

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